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お祖父ちゃんの悩みは、人間関係とお金だった

今、パパが大人になって君の祖父を人として客観的に見ると、決して悪い人間ではない。しかし、世の中の見えないルールや上手に生きるコツのような知識や情報が足りなかったと思う。

お祖父ちゃんは公務員だった。

パパが小さかった頃のお祖父ちゃんは、役所で嫌なことがあると、家でたくさんお酒を飲んだ。君はパパが家でお酒を飲む姿を見たことがないから、どういう姿か想像がつかないと思うけど。

「仕事で嫌なこと」というのはすべて人間関係だ。職場で上司と上手くいかないとか、同僚と上手くいかないとか、一緒に働いている人たちとのコミュニケーションがうまくとれないので、お祖父ちゃんの悩みは定年を迎えるまでの約42年間続いた。

人間関係に悩むとイライラするので、お酒を飲む量が増えるわけ。会社に対する不満や文句がたまっている人は、お酒を飲むとだいたい他の人に愚痴をこぼすか、からむか、泣く。

いつもというわけではなかったけれど、家族に辛く当たったり、お祖母ちゃんに愚痴をこぼしたり、悩んでいるお祖父ちゃんの姿をパパはずっと見てきた。

お祖父ちゃんのもう1つの悩みはお金だった。お祖父ちゃんは公務員だったので、世間では中流と呼ばれる階級だったはずだが、お祖父ちゃんは「給料が安い」といつも文句を言っていた。

祖父母はお金の使い方が上手ではなかった。理由は、世間体とか体裁、つまり周囲の目を気にしたお金の使い方だったから。

お金に余裕がないのに、子ども二人を私立の幼稚園に通わせたり、公務員だったらマイホームを買うのが当たり前とか、それなりのランクの車に乗るのが当たり前というふうに、世間体を気にした見栄を張ったお金の使い方だった。

自分の稼ぎだけで家族を養っているようにも見られたかったから、お祖父ちゃんはお祖母ちゃんが仕事をすることも禁止していた。

収入はある程度決まっているのに、マイホーム、車、子どもの教育など、お金をあちこち使えば足りなくなるのは簡単に想像できる。

家計は火の車という感じだった。毎月赤字で、夏と冬に出るボーナスで赤字を埋め合わせていた。祖父母が、「今月もお金が足りない」と話しているのを何度も聞いたことがある。

君はパパとママがお金でケンカをしているのをほとんど見たことがないからわからないと思うけど、人は、お金が原因でケンカをする。と言うか、人と人のトラブルはほとんどお金絡みだ。これについてはあとで詳しく話そう。

当時のお祖父ちゃんの口癖は、「俺のような惨めな仕事をするんじゃない」「自分の好きな仕事をしろ」「勉強して社長になれ」だった。どれだけお祖父ちゃんが自分の仕事が大嫌いだったのかがわかると思う。

つまり、「イヤイヤやる仕事ではなくて、かつ、人よりも少しはお給料がいい仕事をして、なるべく人間関係が悪くない仕事を選んだほうがいい」ということを小さい頃からパパに言い続けてきた。

君が大人になって仕事をするようになればわかると思うけど、会社の人間関係は選べない。自分で上司を選ぶとか、同僚を選ぶとか、部下を選ぶことはできない。

お祖父ちゃんを見続けてきて思ったのは、「大人になった時、好きとは言わないまでも、自分が嫌いではない仕事で、かつある程度稼げる仕事をしないと、お祖父ちゃんと同じ悩みを持つことになる」ということだった。

お祖父ちゃんを見ていると、仕事に絶望し、人生そのものにも絶望していたように思う。唯一の希望が子どもで、とくに長男のパパに期待をかけたのは、今思うと仕方がないことだったかもしれない。

「同じような大人になったら大変なことになるぞ」に続く。

2016.12.02

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